「洗い替え方式」vs「昇給表による積み上げ方式」
人事評価制度を導入する際に、社長から聞かれる質問があります。
「評価点で給与を決める“①洗い替え方式”と、②昇給表で少しずつ上げる方式、どっちがいいですか?」

結論から言うと、
「点数によって昇給表で少しずつ変動する制度」のほうが、
中小企業にとって圧倒的に合理的で運用しやすい仕組みです。
① 洗い替え方式とは?
評価点によって毎年給与を「ゼロベースで再設定」する方式です。
たとえば、
90点 → 30万円
80点 → 25万円
70点 → 20万円
というように、評価点数で給与が直接決まる仕組みです。
【メリット】
評価結果がダイレクトに給与へ反映される
「成果主義」が明確で、社員にも分かりやすい
【デメリット】
評価が1回変わるだけで給与が大きく変動し、社員の生活が不安定になる
一時的な評価ミスや景気の波で不公平感が生まれやすい
経験や能力の積み上げが反映されにくく、長期的な成長意欲が下がる
人件費予算が読めず、経営計画を立てにくい
成果主義を徹底したい会社には魅力的に見えますが、実際には“短期評価のぶれ”で社員の雇用を失うケースが少なくありません。

② 昇給表で少しずつ変動する方式とは?
評価点に応じて「昇給額」だけが変わる積み上げ式です。
たとえば、
S評価:+6,000円
A評価:+4,000円
B評価:+2,000円
C評価:±0円
D評価:-2,000円
といった形で、毎年の給与に少しずつ差がついていきます。
【メリット】
安定性と公平性のバランスが良い
評価の誤差があっても、極端な影響が出ない
昇給・賞与と連動させやすく、運用が簡単
評価のPDCA(改善)サイクルを回せる
長期雇用を前提とする中小企業にフィット
【デメリット】
結論:中小企業には「積み上げ型」の方が圧倒的に合理的
日本の中小企業は、「長期雇用」や「現場の安定」を前提にしています。
そのため、
「点数によって昇給表で少しずつ変動する制度」のほうが、社員の安心感・評価の納得感・人件費の安定をすべて両立できます。
一方で、
「成果をもっと反映したい」「成長スピードを高めたい」企業では、昇給表をベースにしつつ、一部だけ洗い替え方式を取り入れるハイブリッド型が最適です。
まとめ
「洗い替え方式」は変動が大きく、短期的な成果重視
「昇給表方式」は安定・公平・運用のしやすさ重視
中小企業では②が合理的
成果主義を強めたい場合はハイブリッド設計が有効
社員を伸ばしながら、人件費をコントロールする。
それが中小企業にとって“本当に機能する評価制度”です。
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