2025/12/21

中小企業の人事評価制度――合理的なのはどちら?

「洗い替え方式」vs「昇給表による積み上げ方式」

人事評価制度を導入する際に、社長から聞かれる質問があります。

「評価点で給与を決める“①洗い替え方式”と、②昇給表で少しずつ上げる方式、どっちがいいですか?」



結論から言うと、


「点数によって昇給表で少しずつ変動する制度」のほうが、
中小企業にとって圧倒的に合理的で運用しやすい仕組みです。

① 洗い替え方式とは?

評価点によって毎年給与を「ゼロベースで再設定」する方式です。

たとえば、

  • 90点 → 30万円

  • 80点 → 25万円

  • 70点 → 20万円

というように、評価点数で給与が直接決まる仕組みです。

【メリット】

  • 評価結果がダイレクトに給与へ反映される

  • 「成果主義」が明確で、社員にも分かりやすい

【デメリット】

  • 評価が1回変わるだけで給与が大きく変動し、社員の生活が不安定になる

  • 一時的な評価ミスや景気の波で不公平感が生まれやすい

  • 経験や能力の積み上げが反映されにくく、長期的な成長意欲が下がる

  • 人件費予算が読めず、経営計画を立てにくい

成果主義を徹底したい会社には魅力的に見えますが、実際には“短期評価のぶれ”で社員の雇用を失うケースが少なくありません。


② 昇給表で少しずつ変動する方式とは?

評価点に応じて「昇給額」だけが変わる積み上げ式です。

たとえば、

  • S評価:+6,000円

  • A評価:+4,000円

  • B評価:+2,000円

  • C評価:±0円

  • D評価:-2,000円

といった形で、毎年の給与に少しずつ差がついていきます。

【メリット】

  • 安定性と公平性のバランスが良い

  • 評価の誤差があっても、極端な影響が出ない

  • 昇給・賞与と連動させやすく、運用が簡単

  • 評価のPDCA(改善)サイクルを回せる

  • 長期雇用を前提とする中小企業にフィット

【デメリット】

  • 成果主義を強く打ち出したい会社には「変化が小さい」と見える

  • 優秀社員への報酬差がやや緩やかになる

結論:中小企業には「積み上げ型」の方が圧倒的に合理的

日本の中小企業は、「長期雇用」や「現場の安定」を前提にしています。

そのため、
「点数によって昇給表で少しずつ変動する制度」のほうが、社員の安心感・評価の納得感・人件費の安定をすべて両立できます。

一方で、
「成果をもっと反映したい」「成長スピードを高めたい」企業では、昇給表をベースにしつつ、一部だけ洗い替え方式を取り入れるハイブリッド型が最適です。

まとめ

  • 「洗い替え方式」は変動が大きく、短期的な成果重視

  • 「昇給表方式」は安定・公平・運用のしやすさ重視

  • 中小企業では②が合理的

  • 成果主義を強めたい場合はハイブリッド設計が有効

社員を伸ばしながら、人件費をコントロールする。

それが中小企業にとって“本当に機能する評価制度”です。

人事制度に関する問い合わせはコチラから。

「坪島経営労務事務所は、社外の人事総務部として、社長の悩みや困り事を解決し、企業の業績向上を支援します」