有給休暇を何とかしたい |
先日、歯科クリニックの院長と打ち合わせをしていると
「職員が退職時にまとめて有給休暇を取得して辞めるんだが、何とかしたい。
権利だから、仕方ないのかもしれんが、引継ぎが十分できなくて迷惑してるんだよ。」
特に有資格者が退職するケースでは、代わりの人が見つからなくて現場が混乱していることは
よくあります。 院長が感情的になるのも当然といえば当然です。今までいろいろ世話してきた
つもりなのに、辞める時は権利の主張してあとは知りませんという態度なわけですから。そこで…
「院長、1ついい方法がありますよ」
意外と知られていませんが、有給休暇を毎年自動的に自然消化する方法があります。
年次有給休暇の計画付与というんですが、導入前と導入後で比較してみましょうか?
ケーススタディ
A歯科医院 従業員17名(パート含む) 1日あたりの所定労働時間8時間 給与締日15日
休診日 水・日・祝日(祝日のある週は水曜日営業)
①導入前
年間休日は、105日です。ただし、ゴールデンウィーク、盆休み、正月休みも休日にしています。
②導入後
年間休日は、93日です。ただし、ゴールデンウィーク、盆休み、正月休みは公休日と重複する
日以外は有給休暇の計画付与に充てています。
例)5/3~5/6 8/13~8/16 12/29~1/2 計13日
1)有給休暇の自然消化を導入できないケース
2/16~3/15 出勤日数 20日 公休8日 計28日 期間中の総労働時間160時間
医院の休診日(公休日)を除いた出勤日数が20日あり、1週間あたり40時間を下回っている
週がないため
2)有給休暇の自然消化を導入できるケース
12/16~1/15 出勤日数 18日 公休8日 正月休5日 計31日
期間中の総労働時間144時間+40時間(有給消化分)=184時間
チェックポイント:医院の休診日(公休日)を除いた出勤日数が18日あり、31日の暦の月の場合
労働させるにはまだ余裕が十分ある。また、有給休暇の計画付与を導入しても1週間あたり40時
間を上回る週はないので問題ない。
まず、ノーワークノーペイの原則に基づき、年次有給休の自然消化のシステム導入をすすめていきます。
過去の医院内の慣例から従業員の既得権にも配慮しながらすすめていくことがポイントです。
ノーワークノーペイとは仕事をしなければ、賃金を支払う必要がないという原則です。
12/16~1/15の場合、12/29~1/2は医院で定める公休に該当せず、本来であれば労働日であり、
ノーワークノーペイの原則でいけば、給与から5日分控除という扱いになります。
184時間労働する義務があるのに、144時間しか働いていないからです。
そのかわり、12/29~1/2を有給休暇の計画付与にすれば、賃金減額はありません。ただし、個人の
年次有給休暇は5日分自然消化することになります。(ただし、個人の有給は少なくとも5日は自由利用
させる義務があります) 運用のためには就業規則に定め、年有給休暇の計画付与の労使協定の説明
をして、従業員の代表者からサインをもらう必要があります。
また、導入の際は、職員との話し合いがポイントです。先日私もクライアントの職員に有給休暇の計画付
与の説明をしてきました。
損するんじゃないか?中途入社の場合はどうなるのか?違法じゃないのか?
と様々な質問がありましたが、詳細は別の機会にご案内します。