先日、ある社長さんが人事評価制度について触れられ、「制度を作ることと現実は違う」とおっしゃいました。
このコメントに少し誤解があると感じましたので、今回はその点について考えてみたいと思います。
確かに、最初は制度と現実が一致することはありません。
しかし、大切なのは「制度を作ることで現実を変えていく」という視点です。
これまでも、長時間残業による過労死を社会的に問題視して、あるべき姿として残業時間を規制する制度が施行されました。
まず、社長が目指す「人と組織のこうありたい姿」を思い描いてみてください。
こうありたい姿と現実の間には、往々にしてギャップが存在します。
そのギャップを埋めるためにこそ、制度があるのです。
例えば、組織としては、こうありたい姿を実現するために、社員に自己研鑽し自己を高めながら働いてほしいと考えている場合、人事評価制度の中に「自己研鑽」を評価項目として盛り込むことができます。
自己研鑽に必要な費用は、年間の予算を決め会社が負担します。
それにより、社員は自己研鑽が評価されることを理解し、日常において自己研鑽する機会が増えるでしょう。
結果として、組織の現実が理想に近づいていきます。
これが「制度を作ることで現実を変える」ということです。
人事評価制度は単なる形だけのものではなく、組織や人を成長させ、理想的な文化や行動を促進するための強力なツールです。
制度をしっかりと構築し、適切に運用することで、少しずつですが確実に現実が変わっていきます。
現実と制度が最初から一致することは稀です。
しかし、制度を通じて目指すべき姿を定め、その姿に向かって社員や組織が成長していく。そのプロセスこそが、人事評価制度の本質であり、価値なのではないでしょうか。
今後も多くの企業が、この「現実を変える」視点を持ち、人事評価制度を効果的に活用していくことを願っています。
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