2025/8/23

賃金見直しの落とし穴 ―「手当」がトラブルを招く

現在、多くの企業で「賃金の見直し」が進められています。最低賃金の上昇、労働力不足、そして社員の定着やモチベーションの向上。こうした課題に対応するためには、賃金制度の整備は避けて通れません。

その中でも意外と見落とされがちなのが 「手当」 です。誤解から労使トラブルや行政からの是正勧告につながりかねません。


よくある「手当の名称」と「実態のズレ」事例

  • 住宅手当といいながら、実際には一律で全員に支給している
    → 実態は住宅にかかわらず支払っているなら、残業計算時に単価に含める必要がります。名称を見直すべきです。

  • 皆勤手当の解釈
    → 「有給休暇を取得しても欠勤1回で全額カット」といった運用はトラブルになりやすく、労基署からも指摘を受けやすい典型例です。

  • 役職手当という名前だが、仕事量や役割に関係なく一律支給
    → 実際は管理監督者に該当しない場合に役職手当を「残業代」として会処理していることがあり、未払い残業問題に発展することもあります。
    なお、労基署の調査による未払い残業代は、1企業あたり平均609万円 監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)|厚生労働省

トラブル事例

ある中小企業では営業に伴う残業代として「営業手当」と称して毎月3万円を支給していました。ところが、雇用契約書や就業規則には営業手当を残業代として支払う旨の記載がありません。結果、労働者側から残業代をもらっていないと主張され、会社は未払い分をまとめて支払うことになったのです。


見直すべきポイント

  1. 賃金規程と雇用契約書の整合性
    → 実際に支給している手当と、規程・契約書の内容が一致しているか確認。

  2. 手当の名称と支給目的の一致
    → 名称だけ「住宅手当」「営業手当」になっていないか。

  3. 法的リスクの有無
    → 未払い残業・不利益変更・賞与計算の基礎に入れるかどうか、注意が必要です。

まとめ

手当は社員にとって「当然の権利」と受け止められる一方で、会社にとっては「柔軟に調整できる支給項目」と思われがちです。だからこそ、名称と実態がズレたときにトラブルが発生します。

賃金見直しのタイミングは、 「手当の棚卸し」 を行う絶好のチャンスです。
「生活給」と「仕事給」に整理し直し、規程・契約書と一致させることで、社員の納得感と会社のリスク回避の両立が可能になります。

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