「求人を出しても応募がない。仕方がないから、営業所を1つ閉めようかと考えている」
ある社長の言葉に、私は強く違和感を覚えました。
人事評価制度の設計を進めていて、まさに“働く人の価値”を見直している最中にもかかわらず、「人が足りない=社員を増やす」だけで思考が止まってしまっている。
これは多くの企業が陥る、“人を雇えば何とかなる” “構造そのものを見直さない”という盲点です。

■現行の体制と見直しポイント
現在、3営業所に正社員が各3名ずつ。月の人件費は、社会保険料を含めるとおよそ300万円。
「なぜ3人が必要なのか?」と聞くと、
しかし、この体制こそが 高額な固定費 を生み、慢性的な 人材不足 を加速させている原因なのです。
■主な課題
高すぎる固定費、業界全体は売り上げ減少の見込み
店舗の開け閉め対応が属人的で非効率
配送業務を各営業所が個別対応しており、手間と時間が分散

■提案した対策
✅ 組織体制の見直し
→ 営業所ごとの“フル装備”体制を見直す。
✅ 配送専属部署の立ち上げ組織図の見直し
→ 配送は専任部門が一括対応。営業所の負担を軽減。
✅ 非正規社員の育成 パートの戦力化
→ 朝・夜の開け閉めはパートで対応できるよう研修と役割分担。
✅ 賃金体制の見直し
→ パートも能力に応じて昇給する仕組みでモチベーション維持。
✅ 助成金の活用
→ 配送作業の効率化や省人化に使える助成金制度を活用し、初期コストを抑える。
■再設計後の理想体制
3営業所×2人+配送担当1人=7名体制
人員3割減でも十分に業務を回せる設計
年間人件費は約800万円削減見込み
■社長が気づいた「当たり前の危うさ」
提案をした際、社長はこう漏らしました。
「業界に長くいると、今の形が“当たり前”になっていた。言われてみれば、なぜ3人必要なのか、説明できないことばかりだね」
この“気づき”こそが、変革のスタートです。
社員を増やす前に、本当にその人員が必要なのか。役割を分解して再構成すれば、もっと少人数でも、もっと効率的に、もっと働きやすくなる。
■今こそ、立ち止まって考えるとき
求人が来ないのは、給与や待遇の問題だけではありません。
「この組織に入りたい」と思える、持続可能な体制と未来像が描けていないことが原因です。
人手不足という“外の問題”に対応するためには、まず 組織内部の構造を変えること。
それが、営業所閉鎖の危機をチャンスに変える唯一の道なのです。
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