2025/7/12

管理者だから残業代はいらないは本当か?

先日、あるクライアントの部長さんからこんなご相談をいただきました。

「課長が夕方に体調不良で早退したのですが、その日の夜に機械の突発トラブルが起きて、20時から24時まで現場対応に出てもらいました。本人も“管理職だから残業代はいりません”と言ってくれています。大丈夫でしょうか?」

このようなご相談、実は少なくありません。

「課長=管理職=残業代不要」と思われがちですが、実はこの“管理職”という言葉には、法律上大きな誤解が潜んでいます。

■ 「管理監督者」とは?

労働基準法で残業代の支払いが免除される「管理監督者」とは、単に役職が「課長」「部長」などになっているだけでは該当しません。

裁判例や厚労省の通達などを踏まえると、主に次のような条件が必要です。

  • 経営方針や人事権に関与できるほどの職務上の重要な地位にあること

  • 勤務時間に厳格に縛られておらず、自らの裁量で働けること

  • 管理監督者にふさわしい待遇(基本給・役職手当など)を受けていること

つまり、現場に張り付き、シフトに沿って働いている「現場の管理者」は、法律上の「管理監督者」ではない可能性が高いのです。

■ 深夜手当は、管理監督者でも必要です

もう一つ、重要なポイントがあります。

管理監督者であっても、「深夜(22時〜翌5時)」に働いた場合は、**深夜割増(25%)**を支給しなければなりません。

今回のように、夜20時〜24時までの出勤であれば、少なくとも22時以降の2時間分には深夜手当が発生します。


■「誠実な管理職」に報いる労務体制を

今回ご相談いただいた課長職の方は、体調が優れない中でも、緊急対応の連絡にすぐ応じてくれました。まさに、会社を支えてくれる「縁の下の力持ち」です。

そういった方にこそ、**「管理職だから残業代はいらない」ではなく、「法的に適切な処遇をする」**という姿勢が、これからの人材定着・育成に直結します。

■社長にお願いしたいこと

  1. 自社の「管理職」が本当に労基法上の管理監督者かどうかを一度チェックしましょう。

  2. 管理職でも深夜割増は必須だという点を、改めて就業規則等で明確にしておきましょう。

  3. 突発対応など貢献に報いるルール(代休・手当など)の整備を検討しましょう。

■最後に

経営者が「頑張ってくれてありがとう」という気持ちを“正しい労務対応”で表すことこそが、会社の信頼力を高め、社員の本気を引き出します。

「管理職だから大丈夫」は通用しない時代です。ぜひ一度、御社の労務体制を見直してみてください。

必要に応じて貴社向けに簡易診断も可能です。お気軽にご相談ください。

お問い合わせはコチラから。

「坪島経営労務事務所は、社外の人事総務部として、社長の悩みや困り事を解決して、企業の健全な成長を支援します」